核融合エネルギー研究開発部門
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中心ソレノイドコイルを用いずに高性能先進プラズマを実現
− 原研と大学の協力でトカマク型核融合炉の大幅な簡素化に道 −
平成14年7月19日
日本原子力研究所

 日本原子力研究所(理事長 村上健一)の臨界プラズマ試験装置(JT-60)で、トカマク型装置に従来必要と考えられていた中心ソレノイドコイル(炉心中央にある大型コイル)を用いずに、将来の核融合発電炉の目標値に達する高いエネルギー閉じ込め性能のプラズマを効率的に生成・維持するという革新的な運転手法を世界で初めて実証した。これは、東京大学、京都大学、九州大学、九州東海大学、原研の実験グループ(リーダー 東京大学教授 高瀬雄一)による本格的な連携協力のもとに達成した成果であり、このような連携協力は、ITER計画を推進するわが国の核融合研究開発に大きな役割を果たすものと期待される。

 トカマク型装置では、外部コイルが作る磁場とプラズマ中に流す電流(プラズマ電流)が作る磁場により高温プラズマを閉じ込めている。通常の運転では、まず中心ソレノイドコイルに電流を流し、トランスの原理によってプラズマを生成するとともにプラズマ電流を発生させているが、中心ソレノイドコイルを省略できれば、トカマク型核融合炉において大幅な機器の簡素化が期待でき、小型化・高出力密度化による経済性の向上につながることから、その実現が期待されていた。

 その運転手法を開発してきた大学と原研のグループは、今回、中心ソレノイドコイルを一切用いずに、高周波と位置制御用コイルのみで、プラズマを生成し、プラズマ電流を立ち上げ、それに高パワーのビーム加熱を加えることで、自発電流とビームで発生する電流を利用してプラズマ電流値を効率的に増大させることに成功、高い閉じ込め性能(将来の核融合発電炉の目標値に達する)及び大きな自発電流割合(プラズマ中に自然に流れる自発電流のプラズマ電流に対する割合が90%)を合わせ持つ高性能先進プラズマを生成することに成功した。

 今回の実験では、本手法を用いてこれまで大学の装置で得られた値の十倍に相当する70万アンペアまでの電流上昇に成功するとともに、7千万度(従来は6百万度)の高温プラズマを達成することで核融合炉への適用性を明らかにした。

 高周波のみによるプラズマの生成は、京都大学のトカマク装置WT-2が世界で初めて実現し、九州大学のトカマク装置TRIAM-1Mで世界をリードしてきた技術である。その開拓者である田中茂利京都大学名誉教授、伊藤智之九州大学名誉教授を交えた本共同実験グループは、この技術を発展させ、原研が世界をリードして来た高性能先進プラズマ運転の技術と統合することに成功したものである。今後は、これらの性能をさらに向上させるとともに、維持時間を伸長し、本運転手法の信頼性を高めて行く計画である。最終的には、ITERでの確証を経て核融合炉への適用を決定することになる。